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STaD健康チェック『病院における放射線検査・治療の安全性』 | トピックス | すたっとTV

健康チェック

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放射線科 放射線治療室 診療放射線技師 医学物理士 杉本 賢

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2010年8月から稼働した放射線治療装置

STaD健康チェック『病院における放射線検査・治療の安全性』

2011/05/01

 放射線は1895年にレントゲン博士がX線を発見した時から医療には欠かせない道具として利用されてきました。現在では、CT(コンピュータ断層撮影)やPET(ポジトロン断層撮影法)等の診断、X線や粒子線を用いた治療、X線を利用した透視診断・IVR(心臓カテーテル治療等)等、その技術は高度化・複雑化しています。
 最近、放射線の被ばくについての報道をよく耳にし、心配されている方も多いと思います。これは「放射線=危ない」と誤解されている場合が多いのではないでしょうか。「放射線の影響は、線量に依存する」という考え方が大切であり、病院で使用する放射線は、資格を持ったスタッフがきちんと管理し安全に利用されています。それでも患者様から「短期間に放射線による検査や治療を複数回受けましたが大丈夫でしょうか?」等のご質問を受けることがあります。
 ここで注意したいことは放射線の身体への影響について、検査や治療内容で大きく異なるということ。放射線を受けた部位、検査時の年齢、妊娠の有無(これが一番重要)等の情報に加え、放射線の線量により身体への影響が異なるために一つの答えとなりません。
一般的に放射線による人体の影響には
(1)直接的な身体的不調
(2)放射線による発がんや遺伝的な病気の誘発
の2点が挙げられます。
 (1)に関しては心配する必要はありません。これは放射線治療や長時間のIVRでしか起こりえません。注意しなければならないのは妊娠中の検査等による胎児の被ばくですが、その影響については胎児の受けた線量を正しく評価することが大切であり、検査内容によっては全く問題のない場合もあります。 ㈪については、ある一定以上の放射線の量でなければ起こりませんし、全ての人に起こるものでもありません。また放射線は受けた場所にしか影響を与えないため、遺伝的な病気は生殖腺への被ばく以外では起こることがありません。これらのがんや遺伝的な病気を恐れるあまり必要な検査、治療を受けないことが、結果として症状の悪化を招くかもしれないことをご理解いただければと思います。
 日本は放射線検査を受ける回数が多いとの指摘があります。他国に比べ放射線検査数が多いのも事実ですが、それは医療機関が身近にあり、いつでも必要な検査を受けられることに他なりません。放射線検査や治療で得られる利益は病気や年齢等の状況によって大きく異なります。しかしこの利益と不利益のバランス選択がうまくできているからこそ日本は長寿国なのではないでしょうか。
 当院でも昨年より放射線治療装置を導入、専門医・専任放射線技師を中心に治療を提供しています。私たち診療放射線技師や医師は、医療被ばくについての知識を持ち適切な検査・診療を行っていますので、どうぞご安心して検査・治療をお受けください。