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健康チェック

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聖隷佐倉市民病院 病理科部長:河上牧夫

STaD×聖隷佐倉市民病院~診療科紹介~ 「病理(診断)科とは」

2011/12/02

はじめに
 大病院での認知度の低い部門に「病理科」や「病理診断科」があります。以前は入院患者の食事配膳の「料理科」と間違われる事も少なくなかったのですが、今日では一般に周知されるようになりました。しかしながら、その仕事内容に関して知る人は必ずしも多くありません。ここではその内容紹介と共に、その基盤を成す病理学 (Pathology…ギリシャ語の「病を蒙る(pathos)」と「それを記述する(logos)」の合成語) の過去・現在をお話したいと思います。

病理学の歴史
 病理学の必要性が生じたのは、それ程古い話ではありません。中世までは病気は体液の失調、魂の失調として扱われ、それぞれ「養生法」と「祈祷」が治療の基本でした。薬物としては体験的な効用薬に陰陽五行説などの理法(※1)がつけられて服用、貼付されていました。近代医学の出発は人体解剖による病変の座の特定とその理学的検査法の開発にあり、近代病理学の展開はまさしくその最盛期の1845年前後です。  
 病気の原因を科学的に探る歴史もここからスタートし、実験科学に裏付けられた原因として最初に登場したのは病原菌の発見でした。多くの病気の病原菌が次々と同定(※2)され、その種類も大型の回虫からウイルスまで多種多様にあり、それに応じて抗生物質のような“抗菌剤”が開発されました。しかし、病気を解明する病理学の展開とともに、「感染説」だけでは説明できない厄介な疾患が、次々に判明してきました。代表的なものは、「変性疾患(※3)」「先天性・後天性を問わない代謝疾患(※4)」「腫瘍」です。
 今日「変性疾患」では自己免疫説、代謝障害、遺伝子障害などの機構異常説(※5)が一般的に言われています。しかしそれらの病的機構を始動される原因に関しては、今もなお想像の域を出ない多くの疾患があります。

病理学の現在と展望
 病理学とは対象疾患の病変解析を業務とする部門です。疾患部から取り出された臓器や組織(検体)を顕微鏡等の観察を通して、病の本態を特定し、臨床医に報告したり、不幸にして患者さんが亡くなられた際には、速やかに解剖して、病気の全体像の把握を通して真の原因を解明いたします。
 当院では病変解析の基本的なツールを用意して、日常の組織観察のみならず、特殊染色や特異抗原による免疫染色、電子顕微鏡による超微形態の観察も行っています。またセカンド・オピニオンのほか、臨床医のためには剖検(病理解剖)にも対応可能です。
病気の情報開示やインフォームド・コンセント「説明と同意」とともに開かれた医療が日常となった今日、皆さんと共に医療の質の更なる向上に貢献して行きたいと思います。

※1 理法:道理にかなった法則
※2 同定:生物の分類上の所属や種名を決定すること
※3 変性疾患:原因不明を含む神経細胞や神経組織が変性してしまう疾患のこと(アルツハイマー病、パーキンソン病など)
※4 代謝疾患:体内のさまざまな代謝系に異常をもたらす疾患の総称(糖尿病、高脂血症など)
※5 機構異常説:発病メカニズムの異常説