嚥下(えんげ)障害とは、食べる事、飲み込む事の障害のことで、上手く食べられない、飲み込めない状態をいいます。嚥下障害の治療をしている方は全国に200万人以上いるといわれています。高齢の方に多い病気と思われがちですが、50歳前後から飲み込む力が少しずつ弱くなるため、中高年の人なら誰にでも起こる身近な病気です。また、食べ物などが食道ではなく気管に入ってしまう事を誤嚥(ごえん)といい、これも嚥下障害のひとつです。
● 嚥下障害の症状
嚥下障害は重症化すると、食事中に窒息してしまったり、肺炎の原因となってしまったりして、時には命に関わる事もあります。多くの方は重度な障害ではなく、お食事に関する不快感(「食事の時間が長くなってきた」「飲み込んだ後にのどに残っている感じがする」など)といった軽い症状が多いです。
● セルフチェックをしてみましょう
聖隷式嚥下質問紙という簡単な質問用紙があります(表1)。ご自分やご家族についてこの質問項目に回答してみてください。それぞれの質問への答えとしてA(しばしば、あきらかに)・B(ときどき、わずかに)・C(なし)から選び、Aが1項目以上もしくはBが3項目以上ある場合は、嚥下障害の可能性が高いので医療機関の受診が望ましいとされています。
1.肺炎と診断された事がありますか?
2.微熱が出たり、痰が増えていませんか?
3.やせてきましたか?
4.物が飲み込みにくい事はありますか?
5.食事中に、ムセる事がありますか?
6.お茶を飲む時に、ムセる事がありますか?
7.食事中・食後・それ以外に、のどがゴロゴロする事がありますか?
8.のどに食べ物が残る感じがする事がありますか?
9.食べるのが遅くなりましたか?
10.硬い食べ物が、食べにくくなりましたか?
11.口から食べ物が、こぼれる事がありますか?
12.口の中に食べ物が、残る事がありますか?
13.食物や酸っぱい液が、胃からのどに戻ってくる事がありますか?
14.胸に食べ物が残ったり、つまった感じがする事がありますか?
15.夜、咳で眠れなかったり、目が覚めることがありますか?
16.声がかすれてきましたか?(ガラガラ声やかすれ声など)
Aーしばしば・あきらかに
Bーときどき・わずかに
Cーなし
Aが1項目以上もしくは、Bが3項目以上ある場合は、嚥下障害の可能性が高い!
いかがでしょうか?質問に答えてみると、意外にもどこかに該当するのではないでしょうか?該当項目が多ければ医療機関を受診することをお勧めします。また、該当項目が少ない方は医療機関を受診する前に、まずは毎日の生活の中で改善できる事がないか考えてみましょう。
●お食事をいつまでも楽しむために日常生活でできる事
何よりも食事は栄養を得る大切な時間ですが、同時に人生の中で大きな楽しみの時間でもあります。食事内容を食べやすい物や好きな物ばかりに偏らないように、なるべく品数多く色々な物を少しゆったりと時間をとって、安定した姿勢で食べるようにしましょう。栄養として体内に吸収されやすいようによく噛んで、色々な食事を摂り満遍なく栄養をとりましょう。また、虫歯や歯周病などがある方は、かかりつけの歯科受診を忘れないようにしてください。お茶やお味噌汁などの水分は慌てて飲むと思っているより早くのどに入ってしまいムセやすいですから、その味を楽しむようにゆっくりと飲むようにしましょう。
次に、食事が終わったら口の中だけではなく、のど全体を綺麗にするために歯磨きやうがいをしましょう。勢いよくガラガラとうがいをするとムセてしまう人は、ブクブクやクチュクチュうがいをしましょう。特に夕食のあとのケアは重要です。コロナ禍ではある程度制限が出てしまいますが、できる範囲で体を動かすよう体操をしたりウォーキングをしたりしましょう。そうそう、よくしゃべる事や笑う事ものどを活発にする大切な運動です。多くの人とカラオケ店などには出かけにくいかもしれませんが、マスクごしでも大きく口を開けてしゃべったり笑ったりしましょう。
このように自分でできる事をしてみても、やっぱり調子が今一歩でしたら専門の医療機関を受診してご相談ください。
耳鼻咽喉科 部長 津田 豪太
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摂食嚥下外来:毎週火曜日(午前) ※完全予約制
(紹介状が無くても、自己判断で予約可能です。)
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