嚥下障害への治療には色々なものがありますが、中心になるのはリハビリテーションです。障害が高度な場合には多職種が協力して入院や外来で治療をする必要があります。重症ではない場合は、定期的な通院での病状の確認などを行いながら、主に自宅などで自分でできるリハビリテーションを続けることが効果的です。自分のペースで続けることで、食べやすくなったり飲みやすくなったりなど症状の悪化を抑えることができます。今回は、自宅でできる嚥下のリハビリテーションについてご紹介いたします。
【筋力強化訓練】
自分の手で首を柔らかく触りながら唾液を飲む動作をしてみてください。いわゆる喉仏が上にあがり、最後に少しだけ前にでてきた所でゴクンと音がして、唾液が食道に入っていくのを感じられると思います。この喉仏がゆるやかにあがったあとに前にでてくる動きが嚥下にはとても大切です。色々な病気や加齢、体力低下などで飲み込みが悪くなってくると、十分な高さまで喉仏が上がらなくなってしまったり、前方への最後の動きが減ったりします。そうなると、口の中の食物が1回の飲み込みでは飲みきれなくなってしまい、何回も飲む動作を繰り返し、飲んだ後にのどに食物が残った感じが続いたりします。そして、この状態を放っておくと、飲みきれなかった食物や水分が少しずつ気管に入ってしまい、誤嚥性肺炎になる可能性があります。そうなってしまっては大変です。この嚥下運動で重要な働きをしている筋肉はあごのすぐ下にある頤下筋群(おとがいかきんぐん)です。この筋肉を鍛えるリハビリテーションをご紹介いたします。
■おでこ体操 ーーーーーー
(1)額に手のひらをあてて手で額を後ろに押します。
(2)同時に、首全体に力をいれて手のひらを押し返すようにします。
手の不自由な方でしたら誰かに額を押してもらうように手伝ってもらってもいいです。首全体に力を入れている感覚が大切です。
■のど持ち上げ体操 ーーーーー
(1)両手の親指をあごの下にあてて上に押します。
(2)同時に、あごで親指を下に押し返します。
押し合いによって指先に頤下筋群が緊張して硬くなってくることを感じられます。おでこ体操と似ていますが、もっと直接的に頤下筋群を使う運動ですので、確実な筋力アップが得られます。
■あご引き抵抗運動 ーーーーー
(1)ゴムボールをあごの下に入れて、あごの力でボールを押しつぶします。
ボールの大きさや硬さの違うものを選ぶことで、運動の強さを変えることができます。
※これら3つはどれも目的は同じですので、
ご本人が興味を持って継続できる方法を選んでください。
それぞれ1回に5~10秒程度続けて、1日に10~15回行います。
【呼吸訓練】
気管に食べ物が入りそうになった時などに、十分な咳払いができれば誤嚥の心配がなくなります。また、私たちは嚥下の瞬間には必ず息を止めています。体重減少や体力低下によって咳払いの力が落ちていたり、色々な呼吸器系の病気などで普段呼吸回数が多い人は、食事時間が長くなってくると、咳払いが不十分になったり、嚥下の時に呼吸を止めることが少しずつ辛くなってきたりします。そのような呼吸を安定させる目的のリハビリテーションをご紹介いたします。
■吹き戻し訓練 ーーーーー
(1)子供のおもちゃである吹き戻しを使います。
(2)先まで十分に伸ばすように「ピー」という音が鳴るまで息を吹き込みます。
呼吸機能が低下していたり、鼻に息もれがでるようになっていると十分に伸びなかったり音の持続が短くなります。毎日、長く吹けるか練習をすることで、認知の障害がある方でも楽しみとしてできる訓練になります。
■ブローイング ーーーーー
(1)コップにある程度水を入れ、太めのストローをさし、力強く吹きます。
(2)ブクブクと泡を出しながら10秒以上持続させます。
呼吸の機能が低下していると5秒程度しか吹けないようになってしまいます。ストローの太さを変えたりすることで吹く抵抗を調整できます。咳をしたり痰を出す力が強くなってきます。
それぞれ1日に5~10回行います。
耳鼻咽喉科 部長 津田 豪太
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摂食嚥下外来:毎週火曜日(午前)
完全予約制(紹介状が無くても、自己判断で予約可能です。)
気になる症状がある場合には、お気軽にお問い合わせください。
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