「佐原の大祭」をまちづくりに生かしてきた小森孝一さんが、祭りへの思いを語ります。
「佐原の大祭」は、夏の八坂神社祇園祭と秋の諏訪神社秋祭りの2つの祭りの総称です。夏と秋に大人形を乗せた24台の豪華絢爛な山車が佐原囃子の多彩な調べにのって巡行。川越、栃木と並ぶ関東三大山車祭りの一つと称され、平成16年国の重要無形民俗文化財に指定されています。江戸時代より利根川舟運で繁栄した佐原は財力を背景に祭り文化も開花。商業のまちならではの心意気で、江戸より優る山車祭りを目指して独自の展開を推し進めてきました。
「祭りは政に通じる」と語るのは、佐原商工会議所顧問で、地元住民として祭りを愛し支えてきた小森孝一さんです。昔から祭りは年に一度、各町内が山車の曳き廻しに一丸となって競い合う事で町内の結束力を高めてきました。祭りを軸にしたコミュニティは地域防犯や商業振興に貢献。お囃子の演奏者は、収集手段として潮来や成田といった佐原の商圏30キロ内からの人々が担い、祭りは遠方からの客で賑わいました。
商業都市として繁栄を極めた時代が終わり活気を失い始めた頃、まちおこしでは意見が出なくても、祭りの話題では熱を帯びて話す皆の姿を見て、祭りがまちおこしの起爆剤になると直感。小森さんが祭りを取り仕切る役目の年、初の試みで全15町内の山車を集結、桟敷を設けたところ、多大な協賛を得ただけでなく3千席の桟敷も満席、店の売り上げも盛況で予想外の経済効果が生まれ驚きました。これを機に皆が自分のまちの祭りの価値を再認識します。同時期まちでは、中心部を流れる小野川の埋め立てを巡り論争が高まり、町並み保存に尽力する市民団体と出会います。祭りと町並みを愛する人達がまちおこしへの意識を共有できた事で、小野川沿岸は関東初の重要伝統的建造物群保存地区に選定されるまでに至りました。これが自分達の住むまちの価値をも再発見契機となり、小野川舟運事業に繋がります。祭り期間中は会場までシャトル舟を運航。来場者は水運の要衝として栄えたまちの歴史に触れながら会場に到着します。小野川を活用した観光は住民の意識を変え、汚れていた小野川が見違えました。
皆が熱い気持ちを持つ「祭り」を土俵にまちおこし。小森さんは、小野川清掃に汗を流しながら秋の大祭を心待ちにしています。
佐倉の旧城下町が一年で最も熱気に包まれるのが「佐倉の秋祭り」です。佐倉の秋祭りは、約400年の歴史を誇る「鏑木麻賀多神社祭礼」を軸に受け継がれてきたもので、平成5年から伝統文化継承と、より幅広い市民間の交流を目的に佐倉の秋祭りとして行われています。
祭礼期間中は、大神輿の渡御を中心に各町内の山車、御神酒所、神輿の共演が行われます。6町内保有の山車人形は、江戸から明治時代に製作された貴重な品。例年秋に開催される江戸の歴史と文化の祭典「江戸天下祭」に招かれ、山車人形展示と山車の曳き廻しで参加しています。今年は弥勒町の山車人形「八幡太郎義家」が丸ビルに展示予定。最近では市外からの注目が高まり、県内外からの来場者が増える一方で、受け入れ体制が課題となっています。行政や観光機関、商店会等との連携強化は勿論、秋祭り実行委員会事務局メンバーが若手主体になった事で、様々な意見を委員会を始め各町内祭礼委員長と話し合う形が構築されてきており、祭り運営も見直しが図られています。また、外に向けての情報発信や来場者のもてなしも改善します。
「細く曲がりくねった城下町ならではの道を山車や御神酒所が行き交い、梶棒を巧みに操りながら運行していく様を見て欲しい」と語るのは事務局の安川さん。イベントでなく年に一度の神様のお渡りを祝い迎える神事と、皆で粋に楽しく盛り上がる祭事を併せ持つのが佐倉の秋祭りであり、大神輿を迎える各町内の山車や御神酒所に、城下の賑わいと厳格な空気が漂います。山車人形が各町内に飾られているのを巡るだけでも見応えがあり、祭りだけでなく江戸から明治期に培われてきた歴史と文化を体感できるのが佐倉の魅力。開国150周年に伴い、春には市立美術館で山車人形展を開催、江戸文化が息づく自分達のまちの価値を地元に再発信しました。山口会長を頭に実行委員会は、祭りを誇りに一番賑わう行事として、市をあげての祭りを目指します。
10月、旧城下町では各町内に提灯が取り付けられ祭りの準備が進められます。祭りに向け、町内はもとより旧城下町が一体となる姿にまちづくりがあります。
STaD TV webは「まちづくりメディアSTaD」誌面との融合型映像配信サイト!北総エリアのまちづくり情報をお届けします。