最近、足のつけ根付近の膨らみが気になります。知人に相談したところ鼠径ヘルニアでは?と言われました。どんな病気ですか?
一般の方には「脱腸」と呼ばれているものです。症状としては、立ったり力んだ時に足の付け根の部分(鼠径部)に膨らみとして自覚されます。では、まず鼠径部の解剖について簡単に見てみましょう。もともと鼠径部にはお腹の内と外をつなぐ筒状の管(鼠径管)があります。その中を男性では精索などが、女性では子宮を支える靭帯が通っています。この鼠径管の入口が緩くなると、お腹の臓器を覆っている腹膜が鼠径管内に出てくるようになります。やがて腹膜は袋状に伸びて(ヘルニア嚢)鼠径管内を通り、皮膚の下に脱出します。とび出したヘルニア嚢は、周りの組織とくっつき(癒着)出っぱなしの状態になります。そのヘルニア嚢の中に、お腹に力を入れた際に腸などの臓器が出てくるようになります。その結果、鼠径部の皮膚の下が膨らむようになるのです。これが外鼠径ヘルニアといい、大部分の人がこのタイプの鼠径ヘルニアです。他には、鼠径管の後ろの壁にあたる筋肉が弱くなることで起こる内鼠径ヘルニアもありますが、外見上はどちらも同じで、治療方法にも大差はありません。
立った時や力が入った時に膨らみが大きくなります。痛みはありませんが様子を見ていて大丈夫でしょうか?
初期の症状としては、膨らみを自覚するくらいで痛みを感じることはほとんどありません。立ったり力んだ時にお腹の中の圧が高まり腸などの臓器が脱出し膨らみますが、通常は仰向けになり力を抜くと自然と膨らみは消失します。しかし、そのまま放置しておくと最初はピンポン玉くらいだった膨らみが少しずつ大きくなり、違和感や痛みを自覚するようになります。また時には、脱出した腸などの臓器がお腹の中に戻れなくなってしまうことがあります。これを「嵌頓」といい、この場合は緊急手術が必要になります。従って、痛みなどの症状がなくても放置せずに積極的に治療を受けることをおすすめします。
治療するとしたら、どのような内容になるのでしょうか?
鼠径ヘルニアを治す治療としては手術しかありません。手術では鼠径部に約4cmの創をつくり、まずとび出した腸と腹膜をお腹の中に戻します。それらが出てきた入口(ヘルニア門)を塞ぎ、鼠径管の後ろの壁を補強するようなメッシュのシートをあててきます。当院では主に腰椎麻酔(背中からの半身麻酔)で行い、入院期間はおおむね4~5日間です。手術の翌日から歩行可能で、退院後からすぐにデスクワークなどの仕事が可能です。重いものを持つなどの力仕事は手術の4週間後から可能となります。
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第5回STaD健康チェック「鼠径ヘルニアってどんな病気?」 | トピックス | すたっとTV
健康チェック
廣橋 健太郎先生