ポリオとは、ポリオウイルス感染により運動麻痺や呼吸麻痺をきたす病気で、もし発症してしまうと現在の医学では治療法がありません。口から入ったウイルス(経口ポリオワクチンも同様)が腸管内で増殖し、血流にのって神経細胞に感染します。また糞便中にも排泄されるため、周囲にも感染がひろがることがあります。
1960年代に日本でポリオウイルス(野生株)の大流行があり、多くの方がポリオウイルスによる後遺症に悩まされました。生ポリオワクチンを海外から緊急輸入し事態は収束しましたが、今度はワクチン株によるポリオ感染に苦しむ方々が出てきました。日本が定めている現行のワクチン体制では、「ポリオにかからないように予防接種を受けたらポリオに感染し麻痺を残した」という悲惨な現状を打開することはできません。そこでポリオウイルス感染の可能性が全くない「不活化ポリオワクチン」を輸入し、接種を実施する医療機関が急増しています。
しかし「不活化ポリオワクチン」は海外では広く使用されていますが、ワクチン行政が遅れている日本では未承認のままであり、承認の目処もたっておりません。
ここ30年の間に36名の方々が経口生ポリオワクチン接種に関連した麻痺を発症しました。経口のワクチンであるため、接種者は約1~2カ月もの間便中にポリオウイルスを排泄します。そのため驚くべきことに36名中16名は、接種者のおむつなどを処理していた保護者など周辺の方々です。
不活化ポリオワクチンの安全性は高く、ポリオに感染しないだけでなく、日本で実施されているその他の不活化ワクチンに比べ副反応は少ないとされています。しかしもし仮に接種後に重大な副反応が発生した場合においても、ワクチン輸入会社から保障がおりる仕組みになっています。また不活化ワクチンですので接種後1週間をあければ他のワクチン接種が可能となります。
以上のような経緯から医療機関では一般的に、現行の経口生ポリオワクチンに対して不安をお持ちの保護者の皆様に、不活化ポリオワクチンの接種についての説明会を設け、同意いただいた方のみに接種するという流れで行っています。ただし、全ての病院で受けられるというものではなく、不活化ポリオワクチンの接種に取り組んでいる医療機関に限られます。当院においても6月から不活化ポリオワクチンの接種を開始しましたが、上述の通り未承認のワクチンであるため、接種を強く希望される方を対象としています。
なお、不活化ポリオワクチンに関して、外来窓口や電話等でのお問合せは診療業務に支障を来す場合がありますので、申し訳ありませんが説明会や接種の日程、予約方法などの詳細はホームページや外来掲示物にてご確認いただきます様お願いいたします。
いま、全国で不活化ポリオワクチンの接種に取り組む医療機関が増え続けています。これらの取り組みがポリオ予防の新しい流れになるよう望んでいます。
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健康チェック
小児科医長 鈴木 繁