Q1.50代の夫が、5年前より糖尿病で内服治療をしています。食事なども気をつけていますが、なかなか数値が改善しません。新薬などの最新情報について教えてください!
A1.糖尿病は膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンの量や働きの不足に基づく血糖値の上昇を特徴とする全身の代謝障害の病気です。糖尿病は大きく1型(糖尿患者さん全体の5%)と2型(残りの95%)に分類されます。1型は膵臓からのインスリン分泌が極めて少なく治療にはインスリンそのものの皮下注射が必要となりますが、2型ではインスリンはある程度分泌されています。また、2型は運動不足、過食、ストレスなどの生活習慣と密接な関係があり、多くは内服薬で血糖値をコントロールしますが、内服薬のみでは血糖値のコントロールが出来ない場合もあります。糖尿病治療の基本は膵臓からのインスリン分泌能を保全することです。
糖尿病の薬物療法において、インスリン以外の経口剤では従来より 1.インスリン分泌促進剤、2.インスリン抵抗性改善薬、3.αグルコシダーゼ阻害薬、4.ビグナナイドの4種類があります。しかし、1.の薬は膵臓の負担が大きく疲弊してしまう可能性があるため、最近の治療では最初からは使われなくなりつつあります。
さて、ご質問の糖尿病の新薬は昨年12月より日本でも発売になりました。糖尿病の内服薬で血糖を低下させる作用の分類では5番目にあたります。100年も前より小腸からのインスリン分泌を促進させるインクレチンという消化管ホルモンの存在が知られていました。これを、糖尿病の治療に応用できないかと考えられていましたが、腸から分泌されてからわずか数分で分解消失してしまい、なかなか治療薬にはなりませんでした。しかし、インクレチンを分解する酵素(DPP-4)を抑制することで、インクレチンの寿命をのばし血糖を低下させることが出来るようになり、DPP-4阻害薬が2型糖尿病の内服薬として世の中に出てきました。インクレチンの特徴は血糖値の高い時のみに働き低血糖になりにくいこと、食欲を低下させる働きがあり体重が増加しにくい点にあります。
私自身の経験のなかでも、この薬剤により従来の内服薬の減量につながった症例や、内服薬での血糖管理が難しく、いよいよインスリンを使用しなくてはならないようなケースにおいて血糖値が改善できた症例があります。今のところ大きな副作用は経験していませんが、胃腸の動きを抑制するため、時にむかつきを訴える方もいます。外国では発売され既に3年経過していますが、大きな副作用は稀のようです。さらに、最近では類似薬が注射薬として発売され、脂肪や体重の減少が観察されるなど肥満の方からは喜ばれているようです。また、吸入するタイプのものも開発中とのことで、近い将来、注射が嫌いな方には朗報となるかも知れません。
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第16回STaD健康チェック『糖尿病治療の最新情報について教えてください』 | トピックス | すたっとTV
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聖隷佐倉市民病院 副院長 佐々木 憲裕