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小児科 部長 川村 研

STaD×聖隷佐倉市民病院 「感染性腸炎(いわゆる細菌性食中毒)について」

2011/07/29

この季節になると冬の時期に多くみられるウィルス性腸炎(ノロウィルス、ロタウィルス)にかわり細菌性の食中毒の発症が話題になります。最近では牛肉の生食(ユッケ)による腸管出血性大腸菌O157やヨーロッパでは野菜などによるO104の集団発生が記憶に新しいところです。このように腸管出血性大腸菌による食中毒は毎年問題になりますが、それ以外の原因菌による食中毒もまた存在します。今回は代表的な食中毒の症状を概説します。
【代表的な細菌】
(1)サルモネラ:鶏卵、肉類の生食や、ペット(ミドリガメなど)飼育時の不十分な手洗いなどで発症します。半日~数日後に発熱、腹痛、血便などで発症し、抗生剤の投与や自然治癒などで、症状は軽快しますが、長期にわたって腸の中に菌が住み着きやすいのが特徴です。
(2)カンピロバクター:鶏肉などの生食や汚染された包丁などの使用により発症します。摂取から1日~数日後より腹痛、発熱、水様性血便などで発症します。
(3)黄色ブドウ球菌:手や指の化膿創にいる黄色ブドウ球菌がおにぎりや弁当などに混入し高温のもとで増殖、それを摂取することで、数時間後に発症します。嘔吐、腹痛が強く下痢、血便もしばしば認めます。サルモネラ、カンピロバクターに比べ毒素による発症のためヒトから人への感染は基本的になく、また回復も早いのが特徴です。
(4)腸炎ビブリオ:夏場の海産魚介類の生食により摂取から数時間後に発症、腹痛、嘔吐、時に下痢、血便も伴います。
(5)腸管出血性大腸菌:病原性大腸菌にはいくつかの血清型が知られていますが中でもO157、O26、O111、O104などはベロトキシン産生大腸菌ともいわれ、ベロ毒素を産生し、溶血性尿毒症症候群(HUS)※という病気を引き起こすことがあるといわれています。特にO157は毒性が強くこの菌による腸炎の後、約10%が数日でHUSを発症し、その1~5%は急性期に死亡することがあります。HUSを発症した場合には特異的な治療法はなく、HUSにならないようにするためには、大腸菌感染のごく初期に(2日以内)抗生剤を飲むことが有効とする報告がありますが、確立したものではなく、また早期の診断が困難であることから、有効な予防法もないのが現状です。HUSは低年齢や高齢者で特に重症化しやすいことが知られており、特に乳幼児では火を通していない牛の生肉の生食には十分注意する必要があります。

以上のような食中毒を防ぐためには体の中に原因となる細菌を取り込まないことが重要であり、唯一の予防法になります。たとえば腸管出血性大腸菌では75℃で約1分間の加熱でほぼ菌は死滅すると考えられており、十分に火を通すことにより防ぐ事ができると考えられます。牛肉のレバーやユッケなど生の肉類を摂取するのは個人の自由ということになりますが、食中毒の可能性も考えて特に暑い時期は十分に気をつけるようにしてください。それでももしこれらの細菌により食中毒の症状が出た場合には早めに近隣の医療機関へ受診しましょう。

※溶血性尿毒症症候群(HUS)とは腸管出血性大腸菌が出す毒素が腎臓の細胞や赤血球に作用して血管の中で溶血(赤血球が壊れる)が起こり、同時に急性腎不全が起こる病気です。