現在、日本人女性の14人に1人が一生の間に乳がんにかかるといわれています。他のがんに比べて若い時に発症することが特徴で40歳代後半から50歳代前半がピークとなっています。早期発見早期治療により治り得るのも特徴で適切な治療を受ければ約9割の方が治ると考えられています。
乳がんは遺伝と関係があるの?
親族(親、姉妹、子)に乳がんを患った方がいらっしゃる場合、そうでない方に比べて乳がんになるリスクは約2倍と計算されています。しかしこのことは乳がんと遺伝を関係付ける証拠にはなりません。なぜなら親族の生活習慣は似ていることが多いからです。ご家族に乳がんにかかった方が複数いる場合、家族性乳がんと呼ばれています。乳がん全体の約20%が家族性乳がんにあたります。そして最近の研究によって乳がんと関連がある遺伝子がいくつかわかってきました。その代表的なものがBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子です。これらは誰もが持っている遺伝子で細胞ががん化しないようにする役割をもっています。BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に生まれつき変異があり本来の機能が失われると乳がんにかかりやすくなることがわかっています。これらは同じく卵巣がんにも関係しています。この遺伝子の病的変異によって発症した乳がんや卵巣がんを遺伝性乳がん卵巣がん症候群と呼んでいます。乳がん全体の5~10%がこの遺伝性乳がん卵巣がん症候群だと考えられています。
女優アンジェリーナ・ジョリーさんの選択
2013年5月アメリカの人気女優アンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝性乳がん卵巣がん症候群であると診断され、乳がんになっていない両側の乳房を予防のために切除したことは記憶に新しいと思います。アンジェリーナ・ジョリーさんは実母を含む親族数名を乳がんあるいは卵巣がんで亡くしたという家族歴がありました。ご家族の闘病と死別、自らの発症の可能性、自分の子供たちなどへの思いなどをさまざまなことをよく考え苦渋の決断をして「現時点で健康な身体」にメスを受けたのでしょう。そしてそのことを社会に公表したことは将来に漠然とした不安を抱えている人へのメッセージだと思います。
あなたの選択
家系にがんを患った人がいる方はいつか自分も発症するかもしれないと不安や恐怖を感じることもあると思います。以下に示す項目に1つでも当てはまる方は遺伝カウンセリングを受けることが推奨されています。
● 若年性乳がん(45歳以下)
● トリプルネガティブ乳がん
● 2か所以上の乳がん
● 卵巣がん
● 男性乳がん
● 50歳以下で乳がんを発症した血縁者が1人以上いる
● 卵巣がんを発症した血縁者が1人以上いる
● 乳がんあるいはすい臓がんを発症した血縁者が2人以上いる
聖隷佐倉市民病院は遺伝性乳がん卵巣がん症候群の診断・治療・予防について倫理委員会を通過し体制を整えました。心配な方は遺伝カウンセリングを受けることが可能です。(電話受付による完全予約制 043-486-1155)遺伝子検査の実施や治療・予防についてはすべてご自分の選択により決定されます。現代に生きるあなたには自分の身体の設計図である遺伝子を調べる機会があり、治療・予防について選択する権利を持っています。
聖隷佐倉市民病院
乳腺外科
部長 川島 太一(かわしま たいち)
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STaD×聖隷佐倉市民病院『乳がんと遺伝について』 | トピックス | すたっとTV
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