【リハビリ科とは?】
4月1日にリハビリ科の医師に着任した髙橋博達です。リハビリの内容と役割についてお伝えしたいと思います。最近は多くの病院にリハビリ科の診療科目が見られるようになりましたが、実際にリハビリ科を専門とする医師がいる病院はごく一部と思われます。そうです、小児科医師のいない小児科はないし脳外科医師のいない脳外科はないのに、リハビリ科専任の医師のいないリハビリ科は多いのです。その理由を一言でいうと、『リハビリを実際に進めるのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士という専門のセラピストたちだから…』となります。骨折や脳卒中によって歩行が障害されると理学療法士(PT)が訓練を担当し、手の運動や日常生活動作の指導は作業療法士(OT)が行い、話したり食べたりする機能回復は言語聴覚士(ST)が進めます。ではリハビリ科医師は何をする人なのでしょう?
【リハビリ科医師の役割】
最近の医療技術の進展によって、多くの重症患者さんたちの命を救うことができるようになりました。でも救命できたからと言って、すぐに歩いて家に帰られるわけではありません。長期間のベッド上生活で、足腰や心肺機能や体力、そして食べる機能などは衰え切っています。これらの症状を安全に回復させていくには、PT・OT・STを始めとする多くの職種がチームとしてかかわる必要があります。リハビリ科医師は、『患者さんの生活』を中心に考えて、そのリハビリ・チームとしての方針を決め、旗を振る役割をしているのです。それと危険を伴うリハビリにおいては、リハビリ科医師が深く関わることが求められます。〝食べる〟機能を取り戻すための、『摂食・嚥下リハビリ』はその1例と言えます。
【肺炎のAさんの場合…】
それではここで、仮想の患者Aさんについて考え、リハビリの役割を理解してみましょう。Aさんは85才女性で、普段は息子さん夫婦とお孫さんに囲まれ、散歩と草取りと老人会の旅行を楽しみに生活していました。ところがAさんは、春先の風邪をこじらせて肺炎になり、内科に救急入院となります。入院当初は呼吸困難症状が強く、人工呼吸器の使用も検討される程でしたが、酸素吸入と点滴薬によって、何とか回復過程に入ることができました。ところが2週間の集中治療によって、寝たきりの状態となってしまい、ベッドを起こすだけで強いめまいがして動悸が止まりません。水やお粥ものどを通らずムセてしまうため、鼻からのチューブの流動食で栄養を補給します。そしてなんと、従来の多くの病院では、この状態の時に『肺炎は治りましたので、内科的には入院の必要はありません。そろそろ退院を考えて下さい。』と言われてしまいます。
ところが、リハビリ科としてはここからが本番で、真剣勝負の始まりです。理学療法士(PT)がベッド上での体の向き換えや上体起こしを段階的に進めると、めまいを起こさずに体力が戻ってきます。ベッドに座れるようになると、作業療法士(OT)の指導によって、着替えやトイレ動作、歯磨きなどの日常生活訓練が始まります。食べる機能については、肺炎再発や窒息の恐れもあるため、リハビリ科医師による内視鏡検査の結果を見ながら、言語聴覚士(ST)の指導でゼリーやヨーグルトなどから食べ始めます。2週間にわたる、このようなチーム・リハビリによって、トイレまで何とか歩けるようになり、Aさんの生活は、病気以前の8割程度に戻ってきました。ここまでくれば、あとは自宅で過ごしながらの完全回復を目指せます。介護保険を申請して、地域のケアマネージャーさんに頼んで、通所リハビリに通う計画をたててもらい、発病から1・5ヶ月でご自宅に帰ることができました。ケアマネさんや通所リハビリのスタッフとの協議も、リハビリ科の役割です。
【リハビリの視点は“生活”】
Aさんの経過からおわかり頂けたと思いますが、リハビリ科が患者さんを見ているのは〝病気〟の視点ではなく、〝生活〟の視点なのです。病気のあとに、障害が残っても残らなくても、その後の生活に無理なく移っていくようにお手伝いするのが、リハビリ科の役割だと思っています。聖隷佐倉市民病院リハビリ科では、この〝生活の視点〟に立った医療を実践しやすいように、ハード面・ソフト面の体制整備を進めているところです。何卒よろしくお願い致します。
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リハビリ科とその役割 リハビリテーションセンター長 高橋 博達 | トピックス | すたっとTV
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