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すたっとコラボレーション「本と映画に見る佐倉」vol.2 2006年11月

2008/09/14

私達の住む街・佐倉市が、実は小説や映画の舞台として多く描かれている事をご存知でしょうか。読書の秋!佐倉ゆかりの作品を通して、自分達の住む街を改めて見つめてみませんか。佐倉にゆかりある作品を情報収集、ライブラリーとするホームページ、電子図書館「満開佐倉文庫」から、おすすめの「佐倉作品」をご紹介します。

満開佐倉文庫

小説に書かれる街は素晴らしいと思います。その街には小説に書かれる題材があって、魅力的だからこそ作家が書いていく。そして、小説が生まれるという事は、同時に映画も生まれる要素があるという事です。
色々な人の協力を頂きながら、佐倉が一文字でも出てくる「佐倉作品」を情報発信するホームページ「満開佐倉文庫」を開設しました。現在では、本のデータだけでも約300冊のライブラリーとなっています。出版事情から考えたら、とても一人では集めきれません。皆さんから情報を頂いて、誰もが使えるようにホームページで掲載していく事で「佐倉」という名の情報プラットホームができました。

本で読む佐倉

小説の中で架空人物が登場しますが、一番佐倉にゆかりのある架空人物を書いているのが池波正太郎さんです。『鬼平犯科帳』の中で、長谷川平蔵に剣術を教えていた人が、佐倉にゆかりのある人。その友達も、そして泥棒まで、佐倉ゆかりの人といった感じです。実は佐倉を舞台にした殺人事件や容疑者も描かれています。中にはそれを嫌う人もいますが、私は素晴らしいと思います。テレビのサスペンスドラマでも、殺人事件の舞台が都会である事は珍しく、少しミステリアスな土地で起きて探偵が訪ねるケースが多い。宮部みゆきさんの『龍は眠る』では、佐倉で殺人事件が起こった事になっています。佐倉でなくてもいいのに、あえて佐倉を選ぶ理由があるのだと思います。もしかして佐倉は少しミステリアスなイメージを持てる街なのではないでしょうか。また、佐倉ゆかりの人を多く取り上げた作家といえば、吉村昭さんです。佐倉藩や堀田正睦、松本良順などが出てくる作品を書いて下さっています。遺作となった『死顔』では、蘭方医佐藤泰然の話が出てきます。
小説をきっかけに作家に興味を持ち、その作家を調べていくと、更に色々な事がわかります。例えば、夏目漱石の『道草』に「或女」という言葉があります。夏目漱石に関した研究本を見ると、「或女」が佐倉出身の花井 梅という「明治一代女」の主人公だった事がわかります。佐倉を意識していく事で読書の幅も広がります。

映画の中の佐倉

「ハチ公物語」で、主人がハチ公を貰う場面で家に電話するシーンがあり、裏新町の料亭花家(今はありません)にあった昔風の電話ボックスが使われていました。映像では、はっきりとわからなかったのですが、脇に電話番号の札がかかっており、「あ! これは花家だ」と。
北野武監督の「ドールズ」は、三場面で佐倉市の内田地区が使われています。その場面を見つけた方と現場に行ったのですが、目標物がない為わからず、決め手に欠けていたところ、その方がホームページで、スタッフの撮影日記を発見。佐倉市で撮影したという文章がありました。
「アインシュタインガール」は、ユーカリが丘を中心とした佐倉市が舞台の映画です。佐倉にお住まいの方は、ぜひ観て頂きたい1本です。
そして一番驚いたのは、松本清張さんの小説を映画化した昭和34年の作品「点と線」です。これは、中国にいる方からメールがきてわかった作品です。当時、その方が通勤時に国鉄佐倉駅に着いたところ、丁度ロケが行われていたそうです。高峰三枝子さんもいらしたそうですが、駅名は九州の香椎駅で博多人形も置かれているので一見、佐倉駅とは思えません。ところが、鉄道に詳しい方の協力で、蒸気機関車の型式から佐倉駅と決定づける事ができました。
最近の映画でも「NANA」の一場面が、佐倉市でロケを行っています。これは、ロケ情報のホームページを運営している方から教えて頂きました。

館主がおすすめする
地域探しの読書法

読書というと堅いイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、私は楽しむ読書として、「地域探しの読書法」をおすすめします。
小説の中で作家がいいと感じて書く景観は、他の人から見た佐倉の評価であり、手前みそではありません。小説を読んで佐倉が書かれていると驚き、驚いた後に自分の暮らす街は何ていい所だろうという感情が沸いてきます。そういった風景という素材を繋げる事によって、自分の住む街が魅力ある豊かな街だなと実感できます。これが、まちづくりにも繋がるのでないかと思います。読書の秋、皆さんも佐倉本で、地域探しの旅を楽しんで頂けたらと思います。

イメージの風景

小説や映画に描かれる佐倉の風景には、田園風景も登場します。電車で千葉から佐倉方面に向かうと、四街道を過ぎた途端ガラッと風景が変わり、田園風景が広がります。私達はその価値に気付かないかもしれませんが、映画監督や小説家が作品の中で切り取ってくれています。鉄道雑誌にも、佐倉〜物井間の田園風景の中を走る電車が紹介されています。
私達にとっては何気ない風景も、他の人が見た時には心が和むのでしょう。
そんな田園風景こそが貴重な風景であり、それぞれ心の中に息づくイメージの風景です。風光明媚とは価値の異なる風景が、私達の心の中にあるはずです。佐倉の住人でない映画監督や小説家が切り取って発信しているという事は、佐倉の総体的な評価にも繋がります。そして、受信する側の私達も、「佐倉」というキーワードで繋がりを持ち、ジャンルを越えた新たな広がりを見せていくのです。
自分の心の中にあるイメージの風景を大切にしていけたらと、佐倉作品に出会う度に再確認しています。